梅雨も終盤になり、ますます暑くなるこれからの季節、子どもを食中毒から守りましょう。
3年前、ドイツを中心に欧州で大規模な感染が広がり、国内でも焼肉チェーン店で4名の死者を出した病原性大腸菌の一種、腸管出血性大腸菌など、食中毒を起こす最近が増えやすい時期です。
「子どもを食中毒から守る」視点から、改めて親が知っておきたい
食中毒の基礎知識をQ&A方式でまとめました。

Q.子どもは食中毒になりやすい？
A.はい、大人より発症の危険性が高いといえます。
たとえば腸管出血性大腸菌のリスクについて、内閣府食品安全委員会がまとめた報告によると、99～05年の腸管出血性大腸菌による食中毒患者のうち、9歳以下・60歳以上が約半数を占めました。
免疫の働きや胃酸の分泌などによる抵抗力が弱い事が理由です。
また、体重あたりの菌量の割合が大人より大きく、影響が出やすくなります。

生肉・栄養上メリットなし：外食、大人が責任を

Q.「子どもは牛や鶏など生肉を食べないで」と言われるけど、どんなリスクがあるの？
A.ユッケや生レバー、加熱不足で注意したいのは腸管出血性大腸菌の「O-157」「O-111」などです。
重篤化すれば腎不全や脳症などを引き起こします。
鶏刺しなど鶏肉の生食には、食中毒の原因菌として最も多い「カンピロバクター」のリスクがあります。
大阪大の本田武司名誉教授（細菌学）は、「肉を生で食べることに栄養学的なメリットはなく、子どもが避けるのは当然。
大人が食するときも、提供するお店の衛生管理状態を確認し、管理方法の説明を聞きましょう。

Q.肉以外で注意すべき「生」の料理は？
A.刺身で注意したいのは、夏場に急増する「腸炎ビブリオ」。
海中にすんでいて、15度以上になると短時間で急速に増殖します。
お買い物では、一番最後に購入し、帰宅後すぐに冷蔵庫へ、冷蔵庫も頻繁に開閉すると温度が上がるので、早く消費することが重要です。
子どもに人気の卵かけごはんは、「サルモネラ菌」が心配です。
加熱するのが無難ですが、最低でも賞味期限を守りましょう。
生野菜のサラダも、これらの菌の二次汚染の危険性があるため流水で良く洗いましょう。

食中毒予防の決め手

調理前・食事前は、最低でも1分間は石鹸で手を洗う
指一本ずつ丁寧に、両手の指を交差させて、流し洗いをしましょう。
手のひらも爪を立ててしっかり洗う。
手首もしっかり握って十分に流し洗いを行いましょう。

脱水症状あれば即受診

どんなに予防に気をつけても、食中毒のリスクはゼロにはならない。
いざ子どもが感染・発症した場合どうしたらよいのでしょうか？

96年に堺市などで発生した「O-157」の集団感染で、多くの子どもの治療経験を持つ大阪労災病院（堺市）の川村尚久・小児科部長は「便に血が混じったり、嘔吐や下痢が続いて半日近く尿が出ていない、唇が乾いてくるなどの脱水症状が出れば、深夜でも緊急受診してほしい」と指摘する。
多くの食中毒の症状は下痢、発熱、嘔吐など。
注目されている腸管出血性大腸菌の場合、潜伏期間は2～8日。
はじめは水様上の下痢だが、数日たつと血便に変わる。
重症化すれば「溶血性尿毒症症候群（HUS）」などの全身合併症を引き起こすが、川村部長は「今の医療では合併症を防ぐ手だてがない」と話す。
受診時に便や嘔吐物をビニール袋に入れて持参すれば、病院での検査負担が少なくなる。
家で看病する際は、15分おきに大さじ一杯ほどこまめに水分を取らせる。
医師の指示なく下痢止めや痛み止めを飲ませるのは厳禁。
家族への感染を防ぐため、便や嘔吐物の清掃も、ビニール手袋をはめるなどの注意を払うことも重要です。
食事前には、子どもさんと一緒に手洗いしましょう。習慣になれば一人でも洗えるようになります。
（参考資料：毎日新聞　平成23年6月24日朝刊　14Pくらし経済より抜粋）